石原莞爾顕彰会事務局より

墓参された方々のご感想・ご意見を整理の上公開させていただいております。ノートを置いた平成13年からのものです。北海道から九州まで、小学生からご高齢の方まで老若男女、記名された方のうち約2割がこのノートに思いを綴られています。中には、遠方にも関わらず、二度以上訪れる方も相当数いらっしゃいます。石原将軍への熱い思い、永久平和への願い、この国のありようを考える、将軍の生き方に励まされた等々、記述の長短に関わらず、どれも真摯な思いが感じられるものばかりです。

【おことわり】 氏名・住所等から個人が特定できないように配慮させていただきました。できる限り原文のまま転記しましたが、ご寄付、書籍購入、その他、大意に影響ないところを割愛または簡略にした部分があります。また、内容・表現が過度な場合、語彙が読み取れない場合など、整理を控えさせていただいた箇所がありますこと、ご了承願います。当会の管理上のメモは省略。 ― 石原莞爾顕彰会事務局 ―

2010年12月21日火曜日

満州事変 検証論文の英訳

現在進行中の石原莞爾ドキュメンタリーの企画立案者であるブルノ・ビロリ(Bruno Birolli)氏に読んでいただくために、石原莞爾顕彰会の依頼で作業していた、『石原莞爾と満州問題 - 現代歴史学に再検討を要望する』という論文抜粋の英訳を仕上げました。元日本新党の副代表でいらっしゃった武田 邦太郎先生が1987年に書かれた論文です。

基本的に自分の専門はサイエンスであり、通訳案内士免許等は取得はしてはいるものの、歴史・政治関係は専門外の話で、歴史関係で力を入れてやっているのは、地元の歴史関係のみです。具体的には、石原莞爾将軍の年譜翻訳とか、ミシュランガイド庄内地方編とか、あとは、地元の通訳ボランティアの方々向けで本間家等庄内地方の商人の歴史を絡めた酒田の歴史講義作ったくらいで、これまでは、いわばちょっとアマチュア向けの歴史でしたが、今回は本格的に学術的な歴史検証の論文だったので、なかなか大変でした。


サイエンス案件の翻訳は、
  • 言葉、特に専門用語の面では、サイエンスは英語が主要言語の地位を確立しているため、主要コンセプトに対応する語彙は英語には豊富にある、むしろ、英語の方が『格段に豊富に』語彙がある。したがって、どういう言葉が適切かという言葉の選択上での悩みは少ない。
  • 困難なポイントは、説明する理論をしっかり理解できているか、という点。
という特徴があると思います。

一方、歴史関係の案件の翻訳は、
  • 被翻訳案件の対象国(本件では日本、または、満州国)のローカルな史実を表す専門用語に対応する言語が英語では無い、または、あっても使われ方にむらがあって、局在的であるがため、どれが適切かわからない場合がある。したがって、適切な言葉を翻訳先の言語(本件では英語)で、『探す、選ぶ、無ければ作り出す』、という作業が必要になってくる。
  • 理論は、整理しながら進めていけば、たとえ専門外であってもついてはいける。サイエンスでは専門外の場合、少なくとも、基本のテキストブック的知識が無いと、ついていけない場合がほとんどですが、歴史関係の場合専門外でもついてはいける。もちろん、相対的な話。
という特徴があるように、今回思いました。

特に、昔の軍事関係、思想関係の言葉をどう訳していくかが、作業に入ってみると、予想以上に大変でした。理由は、満州事変近辺を扱った英語論文があまり多くないため英語の参考文献が少ないこと、また、英語に翻訳されて使われている言葉も翻訳のされ方が、それぞれまちまちで、この言葉にはこの英語というようなコンセンサスができあがっていないような感じでした。

具体的には、下記用語等は時間がかかりました。
  • 当時の大日本帝国陸軍と関東軍組織、ポジションの呼称等 最初資料を見つけられなかったので、ひとつひとつ訳出していましたが、後半に英語での呼称の資料が見つかったので、解決。
  • 下克上 英訳表現は、supplanting their superiors, political upset, etc まちまちでしたが、これはあまり悩まず supplanting their superiors を採用。これは、簡潔であまり耳慣れない感じがいいという私の好みが主な理由です。political upset に多少説明追加でもいいといえば、いいのですが、聞き慣れすぎた表現で特別な感じが無いのが、あまり使いたくない理由。
  • 王道楽土 これも英訳表現はまちまちで、
    paradise of benevolent government
    righteous paradise
    a Realm of Peace and Prosperity
    utopia
    等々、ありましたが、paradise of benevolent government を選びました。理由は、Herald Tribuneの中で使われていたからです。
  • 民族協和 当初は英訳表現がまちまちだったので、自分でつくろうかと思って、協和という言葉をメインに peaceful coexistence というのを思い付いたのですが、ネットで調べてみると既にこの言葉は共産圏が冷戦時代に西側との平和共存という意味でかつて盛んに使っていたことが判明し、断念。ちなみに、使われている英訳表現は、
    concord of nationalities
    ethnic harmony
    ethnic concordance
    inter-racial harmony
    racial harmony
    等々。
    個人的には、ethnic harmony, ethnic concordance 等、ethnic または ethnicity という言葉を使う英訳が好みです。racial harmony, interracial harmonyという英訳語を使っている論文はかなり多かったと思いますが、個人的には racial という言葉は、biological な phenotype のことをいっているように、私には聞こえてしまうので、文化的視点に重きをおいた民族性という言葉の ethnic のほうがこの文脈では適切なような気がしました。ただ最終的には、concord of nationalities という英訳語にしました。それに落ち着いた理由は、Concordia Association 満州国協和会の中で使われていたからというものです。

正直想定以上に大変でしたが、なかなか味わえない面白い仕事だったと思います。

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